梅崎春生『桜島』



左の上に小さく見える建物は湯の平展望台

 湯の平展望台でバスを降りて、『桜島』の場面を思い出しながら、桜島岳を飽きることなく眺めた。展望台の茶店に80過ぎという老女が店番をしていて、昔話をしてくれた(ほかに客もいなかった)。この下の学校のあたりに戦時中は陣地があったこと、機銃掃射で死んだ子供もいたこと、昭和21年の大噴火が恐ろしかったことなど、話してくれた。機銃掃射の話しで『桜島』」の見張りの兵の場面を思い出した。下の町まで1時間ほど歩いて下ったが、椿の花が満開、山桜も咲いていた。



湯の平展望台近くにある爆発記念碑

湯の平展望台近くで見かけた山桜

 泊まった宿は大きなホテルだったが、二晩とも客はほとんどいなかった。時季はずれだったのだろう。露天風呂が海のすぐそばだった。春の海にイルカの泳ぐ姿が見えた。二、三頭ずつ、戯れるようにして現れ、やがて消えて行くのだった。